中野剛志著「日本思想史新論」を読んで
中野剛志先生の日本思想史新論を先ほど読了した。
文庫本サイズの薄い本であるが、ややもすれば論文に近い内容で小難しい表現も多かったので、読み始めから読了まで二日もかかってしまったが、その内容は「素晴らしかった」としか言いようがない。
中身は意欲的で、溢れ出んばかりの熱情を感じた。
戦後の思想家が思考停止的に評価してきた・せざるを得なかった開国論に一石を投じようとする姿勢。
もちろん、すべてを鵜呑みにすることはない。
著者の主張を妄信的に信じるべきでなく、他の視点からの戦後体制へや開国論への批評が読みたくなる。
特に、中野剛志先生は反グローバル化論者であるし、思想家の主張を恣意的に捉えているかもしれない。
(僕はやや加速主義的な節があるので、そのように感じたのかも。)
それでも、日本の偉大な思想家たちの主張はフェアに扱われえるべきという主張は頷くばかりで、この本で取り上げられた思想家たちは共通して、一貫して合理主義に批判的である。
現代のアメリカ的な合理主義が蔓延る現代にも普遍的なメッセージであり、このようなグローバル化に懐疑的な視点は多くない。
保守系の論壇ですら上念司のようなリフレ&グローバリストが闊歩するこの2020年。
これらの理論展開は今こそ必要だ。
相変わらずカタカナ言葉に弱い日本人にこそ必要な名言の数々。
戦前、開国前の思想に盲目的に批判しがちな日本では貴重な視点だと考える。
多くの日本人に読まれるべき普遍的な傑作だ。